本勉強会は、総務省次世代IPインフラ研究会における議論を受け、インターネッ トバックボーントラフィックの実態を調査するため設立された。 次世代IPインフラ研究会での議論には、増大するバックボーントラフィックへ の懸念、生活基盤に必要な信頼性確保、障害連鎖防止等の安定運用などがあっ たが、特に、バックボーンの現状と課題、つまり、ブロードバンドの普及によ り今後増大するトラフィックをバックボーンが処理しきれるか、また、そのた めに必要なのはネットワーク増強か、技術開発かなどが議論された。
2004年6月の第一次報告書では、ISP14社への聞き取りをもとにバックボーンの 現状を示すデータがまとめられた。 また、報告書は、今後のインターネット の在り方を考える上で重要な基礎データとして、より技術的かつ継続的なトラ フィックデータ集計の必要性を訴えると同時に、企業機密であるトラフィック データの集計には産官学の協力による取り組みが欠かせない事が指摘された。
これを受け2004年7月に、総務省データ通信課を事務局にして、国内ISP7社が 東京大学江崎助教授を座長にするトラフィック勉強会を立ち上げ、あくまで ISPの自主的な取り組みとしてバックボーンデータ収集に取り組み始めた。
集計結果は、総務省の報道資料の他、インターネット関連の国際会議等で度々 発表を行ない、ブロードバンド先進国である日本のバックボーンの現状を示す 貴重な資料として、あるいは、ISPが協調して大規模なトラフィック集計を行 なった世界初の事例として、国内外から注目されている。
本勉強会の目的は、国内バックボーンのトラフィック情報を開示する事によっ て、事実に基づいた健全なインターネットの発展に寄与する事である。 もし、全体のトラフィック傾向を示すデータがなければ、推測あるいは一部の 偏ったデータをもとに議論と判断がなされかねない。
バックボーントラフィックの現状を示すデータは、今後の我が国のインターネッ トの在り方を議論する上で、また、日本は高速ブロードバンド普及率で世界を リードしており、今後のグローバルなインターネットの在り方を議論する上で も、重要な基礎データとなっている。
しかし、企業機密であるトラフィック情報は個別の事業者では開示が難しいた め、産官学の連携によって、トラフィック情報の秘匿性を維持しつつ各社の合 計値としてトラフィック情報を把握する事が初めて可能になった。 このような競合ISP間での連携を実現する事は日本でしかできないと思われ、 世界的にも大きな意義がある。
トラフィック情報は、施策のために重要であると同時に、研究目的やネットワー ク機器開発にも欠かせない。 ISPにとっても、ネットワーク設計、投資計画、さらにはビジネスモデルを検 討する上で有用である。また、インターネットをめぐる様々な議論の中で、 ISPの立場から意見を述べる際に重要な資料となるはずである。
これまで10年以上にわたりデータ収集を行ない、ブロードバンドユーザからのト ラフィックがバックボーンの約2/3を占めており、年率約40%で増加している等 の実態が明らかになってきました。 その一方で、ブロードバンドの普及により今後増大するトラフィックをバック ボーンが処理しきれるか、また、そのために必要なのはネットワーク増強か、 技術開発かという当初の疑問にはまだ答えが出ていません。 トラフィックは様々な不確定要素を含みつつ増加していくため、我々は長期的 なトラフィック情報の収集と解析を続け、その時々で適切な対応をしていく必 要があります。
トラフィック収集作業に関して、協力各社には多大なご苦労をかけていますが、 本活動の目的と意義を御理解いただき、今後とも御協力頂けるようお願いしま す。